石牟礼道子

人間のたれ流した毒によって、生命の根源である海は滅びた。竜神の娘であって海底の宮の斎女であるしらぬいは息もたえだえになって、海底から渚へあがってくる。竜神の息子常若は、人の世のありさまを見めぐってくるよう親から命じられ、その旅からかえってくる。姉弟は渚でめぐりあい、隠亡の尉(実は末世にあらわれる菩薩)のはからいによってしらぬいは再生し、2人は結婚する。 祝婚のために古代中国の歌舞音曲の祖と言われる「き」が呼び出され、浜辺のかぐわしい石を手にとって撃ちならし、妙なる音楽が奏でられるなか、この浜辺に惨死したすべての生きものが舞いに舞い、海は新しい生命をよみがえらせる。